宗教音楽や合唱音楽も、ちょっとした知識を得ることでもっと興味深く聴くことができます。 ここでは、知って為になる「なぁーるほど」という程度の豆知識を順次追加掲載していきます。 なるべく簡単に分かりやすくお知らせするため、いろいろな背景や厳密な定義の省略がありますので、興味がわいたらちゃんと調べて下さいね。(文責 横尾) |
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1.音楽基礎知識編 |
【ミサ(Missa)の語源について】むかし民衆が集まって行われた教会での祈り(聖祭)は、最後に司教が「Ite,missa
est. イテ ミサ エスト(去れ、これにて(集会は)解散する)」と言い放つ習わしから、「ミサ」と言われるようになりました。 【ミサ曲とは】 ( ミサ 通常文の対訳へ) カトリックのミサは、固有文(Proprium)と通常文(Ordinarium)で構成されていますが、「ミサ曲」は、ミサ通常文に統一性をもたせて作曲されたもので、1.キリエ(Kyrie=憐れみの賛歌)
2.グロリア(Gloria=栄光の賛歌) 3.クレド(Credo=信仰宣言)
4.サンクトゥス(Sanctus=感謝の賛歌) 5.アニュスディ(Agnus
Dei=平和の賛歌)の5つの典礼文から成り立っています。 【レクイエム(Requiem)について】 正式には「Missa pro defunctis (ミサ プロ・デフンクティス)
死者のためのミサ」ですが、その聖歌の歌詞が「Requiem
aeternam dona eis Domine (レクイエム=休息 エテルナム=永遠の ドナ=与える エイス=彼に ドミネ=主よ) 主よ、永遠の休息を彼に与えたまえ」で始まることから、一般に「レクイエム」と称されるようになりました。なお、与える(dona)は、臓器提供者の「ドナーカード」のドナーですね。 【アーメン(Amen)という言葉について】ミサの最後などに、必ず唱えるのがこの「Amen (アーメン) 」という言葉。これはヘブライ語で「まことに」「確かに」という意味の言葉です。やがて「そうでありますように」という意味になりました。 【リズムと拍子について】 現在主流のバッハ以降のロマン派などいわゆる「クラシック音楽」では、「4分の3拍子」とか「4分の4拍子」など、拍子をごく普通に使用しています。楽譜も当然に「小節線」が入っていますね。 【テノール(Tenor)の語源について】11世紀ころまでに、それまでの単旋律聖歌に平行した第2の声部(オルガヌム声部)が重ねられるようになると、その下声部は、主旋律を長く引き伸ばしたり保ったりしたため、ラテン語の「tenere〔テネーレ〕"保つ"あるいは"引き延ばす"」という言葉からテノールtenorと呼ばれるようになりました。そしてこの言葉は、15世紀の半ばを過ぎるまで多声の楽曲の一番下の声部を指すものとして用いられたそうです。 【アルト(Alto)の語源について】現代では、女声の低い声部を受け持つアルトですが、元々の語源 Altoは「高い」という意味です。なぜでしょう。これは、一番基本となる「テノール」に絡む声部(コントラテノール)のうち高い音を受け持つ声部を「テノール・アルトゥス」と称していたため、テノールより高い声部をアルトと言うのです。 【ソプラノ(Soprano)の語源について】 合唱や声楽の最高音部を表す「ソプラノ」という言葉はイタリア語です。英語でもソプラノ(soprano)と言いますがトレブル(Treble)とも言います。 【アカペラ(a Cappella)の語源について】一般に、無伴奏で合唱や声楽曲を歌う場合「アカペラ」といいますね。ルネサンス期の理想的な音の構成は、均質な4声部以上の無伴奏の声のアンサンブルとされ、特にカトリックの総本山バチカンのシスティーナ礼拝堂(Cappella Sistina)では伝統的に無伴奏の演奏しか行わないため、そのような無伴奏の様式を「ア・カッペッラ(a Cappella(伊)=礼拝堂風)」すなわちアカペラと呼ぶようになったそうです。 【演奏ピッチについて】 中世・ルネサンスからバロックの音楽を演奏するに当たり、避けて通れないのが演奏ピッチの問題です。 【音名と階名について】 音符の「ド」の音は、「C(又は「ハ音」)」と言ったり、「ド」と言ったりしますね。 【音名の成り立ち】 ヨーロッパでは、古代ギリシャの音名に倣(なら)い、古くから1オクターブの12音の中で7つの音を使って音楽を組み立てていました。その組み合わせはいろいろあったようですが、このうち標準となったものが、基準になる音(a=ラ)から、下に向け「全音、全音、半音」の4度を2つ重ね、さらに全音1つを足すことで1オクターブが完成するという「ディアトニック音階」の手法で、ピアノの白鍵はこの音階を表しています。 【階名の成り立ち】 階名である「ドレミ」は、グイード・ダレッツォ(イタリア:990年頃生まれ)が「聖ヨハネの夕べの祈り」の賛歌(Hymunus)の曲の各節の頭の音が1音ずつ順に上がっていくことを利用して、その最初の言葉を音を示す名前に利用したものとされています。 【オクターブという言葉について】 8度音程を示す「オクターブ」の「オクト:Octo」とは、ラテン語で「8」という意味です。だから8本足の「タコ」は「オクトパス」で「八角形」は「オクタゴン」。ちなみにアメリカ国防総省は、5角形をした建物から「五角形」という意味の「ペンタゴン」と呼ばれ、パソコンでも、インテルはi486の次の第5世代CPUを「ペンティアム」としましたね。 【調律法の基礎知識】 →別冊/調律法基礎知識へ (2009.08.29補筆) 皆さんは、現代の音楽シーンで誰でも使っている「平均律」が、本当は非常に特殊な調律法であり、特に第3度を含む和声的な音楽には不向きであることはご存じでしょうか。 【バッハの平均律クラヴィーア曲集と平均律について】バッハの数ある器楽曲のうち「平均律クラヴィーア曲集」は大変有名ですね。でもちょっと待って下さい。原題は「Das Wohltemperiertes Klavier」。Wohltemperiertesとは「ちょうど良く調律された」というような言葉で、「平均律(独:gleichstufigen Stimmung 英:Equal temperament)」とは異なります。日本では、平均律はどの調でも均等に弾けるというニュアンスから、バッハが、全ての調性を均等に弾ける「平均律」を用いて、全ての調性についての曲集を作曲したと解釈されて(そのような言葉「平均律」が充てられて)いますね。 しかし、本当にそうでしょうか? 実は当時のクラビーア(クラヴィーアとは「鍵盤楽器」ですが、当時は基本的にチェンバロを指すようです)は、自分で調律をしながら演奏したようですが、基本的には5度か3度の音など、どこかの音を純正にして調律したものです。その結果多くの調性の曲を演奏できる調律法が開発され、キルンベルガーやヴェルクマイスターの調律法が生まれました。 バッハは、これらの調律法により、12音階の全てについて各調性ごとに変化する美しい音色を作曲して見せ、「Wohltemperiertes」と表現したのだという説が正しいように思われます。 【即興演奏(インプロビゼーション)という言葉について】 即興で演奏することを「インプロビゼーションimprovisation」といいます。英語では、「即席に作る[行う]こと、即興演奏」というような訳が出てきます。
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【バロックヴァイオリンの構造について】 古楽の世界で使用されるバロックヴァイオリンは、現代のモダンヴァイオリンとどのように異なるのでしょうか。 【チェンバロの呼び名について】チェンバロは日本ではいろいろに呼ばれていますね。でも、みな同じ。
チェンバロの構造やメンテナンス、調律法については、野村満男氏の「チェンバロの保守と調律」(東京コレギウム出版)という大変詳しい本があります。 【コルネット(Cornetto)について】 皆さんは、コルネットというと、柔らかい音の出る小型のトランペットを思い浮かべるでしょう。しかし、ルネサンス・バロック時代の「コルネット」は、まったく異なる楽器で、現代では死に絶えてしまったものですが、バロック以前の教会音楽の演奏には欠かすことのできない楽器です。 【サクバット(Sackbut)について】 サクバットは、トロンボーンの原型となる古楽器です。音の出口(ベル)がトロンボーンよりすぼまっており、全体に細身で小型のものであったため、人間の声に近いやわらかで素朴な音がします。中世からルネサンスの時代は、合唱音楽の定旋律や低声部を重複し、補強する役割が与えられていました。 【ヴィオラ・ダ・ガンバ(Viola da gamba)について】チェロに似たヴィオール族の古楽器。 「ガンバ」とはイタリア語で足の「ひざ」のこと。すなわち「ひざに挟んで弾くヴィオール」という意味です。これと同様に「ヴィオラ・ダ・ブラッチョ」という楽器がありましたが、「ブラッチョ」とは「腕」のこと。すなわち、ヴァイオリンのように「腕に抱えて弾くヴィオール」という意味です。【写真】 【コントラバスはヴァイオリンの一族?】 オーケストラの弦楽器は高い音域から「ヴァイオリン」「ヴィオラ」「チェロ」「コントラバス」が受け持っていますが、実はこのうちコントラバスだけは、「ヴァイオリン族」の兄弟ではなく、「ヴィオール族」という違う種類の楽器です。 【トレモロとピチカートの始まり】 ヴァイオリンの弓を短く上下させる「トレモロ」と指で弦を弾き軽快な音を出す「ピチカート」奏法は、モンテヴェルディが歌劇「タンクレーディとクロリンダの戦い」(1624年)で初めて採用しました。 |
【カントゥスフィルムス(cantus firmus:定旋律)について】 中世、ルネサンス時代の宗教曲を演奏したり聴いたりする場合、欠かせないのが「カントゥスフィルムス=定旋律」を知ること。 【グレゴリオ聖歌について】 グレゴリオ聖歌とは、ローマ教会に現在まで伝えられている聖歌が、7世紀初頭のローマ教皇グレゴリウス1世(在位590-604年)により創始又は編纂されたとの言い伝えからこのように呼ばれているものです。しかし、現在に伝承されているグレゴリオ聖歌が7世紀グレゴリウス1世により作られたという確証はありません。 【オルガヌム(Organum)について】 教会音楽にふれているとたびたび「オルガヌム」という言葉にであいます。これは従来の単旋律聖歌に対して、11世紀(紀元1000年)ころから記録に残る多声単旋聖歌の旋律に第2の声部(オルガヌム声部)が重ねられることをいいます。 【ドローン(Drone)について】 NEW!!ドローンとは、中世音楽や民族音楽などでずっと同じ音程で鳴っている低音の持続音をいいます。ジャズのキース・ジャレット・トリオの演奏*でも同じ音程の持続音がずっと演奏されるものがありますが、時代を超えて音楽が即興で産み出される揺りかごかもしれません。 【晩課=ヴェスプロ Vespersについて】教会の主要な典礼として「聖務日課」があります。聖務日課は公的な日課として定められている祈りで一日八つの時課から成る典礼形式をもち、このうち日没、午後6時に行われるのが「晩課」です。(詳しい解説へ) 【マニフィカートについて】 マニフィカート(Magnificat)は、ミサと並行して毎日行う「聖務日課」の「晩課」の後半に行われる賛歌です。「聖母マリアのカンティクム」とも言われます。 【ファルソボルドーネについて】 ファルソボルドーネ(伊:Falsobordone)とは、中世期に行われた、一種の和声法で、定旋律の上方に3度または6度の音程をおいた曲のことをいいます。フランス語ではフォ・ブールドン(Faux bourdon)、英語ではファバードン(Faburden)といいます。 【ルネサンス期のスペイン音楽について】 イベリア半島にあるスペインは、地理的にピレネー山脈によりヨーロッパとは切り離されていました。イベリア半島の一部(グラナダ)には実に16世紀直前(1492年)まで800年にわたりイスラム教の勢力がありました。そして、音楽的には16世紀から17世紀初頭にかけて、他のいかなる国をもしのぐ隆盛を迎え、また、ルネサンス期の終わりと共に瞬く間にその姿を消してしまいました。 【アントニオ・デ・カベソン(Antonio de Cabezon)について】 クリストバル・デ・モラレスと同じ時代にスペインのブルゴス近辺に生まれ、王家に仕えた作曲家(1510-1566)です。カベソンは裕福な地主の家に生まれ、幼い頃に病気で視力を失いました。音楽教育は、地元の教会オルガニストの一人から手ほどきを受け、ついで北スペインの町、パレンシアに住んでいた一族の有力者エスティバン・マルティネス・デ・カベゾンのもとへ引き取られ、そこで音楽を続けました。 【モンテヴェルディという作曲家について】 初めてこの名を聞いた方は19世紀イタリアの大作曲家「ヴェルディ」と聞き間違えますよね。こちらは同じイタリアでもヴェルディより150年ほど前に生まれた「モンテ(山)ヴェルディ(緑)=日本では緑の山なみを「青々とした」と表現しますから、名字で言えばさしづめ「青山」さんですね。 【ジョスカン・デ・プレという作曲家について】 ジョスカン・デ・プレ(Josquin des Prez 1440ころ〜1521)は、フランドル楽派最高の作曲家で、同時代の人から「音楽の父」「最上の作曲家」といわれました。マルティン・ルターも「彼は音符の主である」と記しています。 |
【キリスト教と宗教音楽について】 みなさんご存じのとおり、キリスト教は大きく「カソリック」と「プロテスタント」に分かれています。(この他オーソドックスと呼ばれる「正教会」を含め、キリスト教の3大宗派と言われています) こうしたことからプロテスタントは、教会や司教を中心とした様々な教義と、マリア信仰に飾られた教会儀礼を排し、聖書の言葉に忠実であることに徹し、聖典礼(サクラメント)を洗礼と聖餐のみに限定したので、カソリック教会の典礼であるミサ通常文による「ミサ曲」はプロテスタントには存在しません。 ところで、バッハ(J.S.Bach)は、バリバリのプロテスタント信者なのに、宗教曲の最高傑作の一つといわれるカソリックの典礼音楽「ミサ曲ロ短調」を作曲しています。ただしこれも全体を1曲として最初から作曲されたものではなく、バッハの生涯の様々な時期に作曲された各楽章を集大成したものです。おそらく作曲家バッハとしては、神に仕える音楽に宗派の違いはなかったのでしょう。 【ラテン語について】 現在では、ラテン語は一般にミサなど宗教儀式の中でしか使用されない死語となっています。しかし、ヨーロッパ統合の流れの中で、国境を越えた共通な母胎となる言語として、最近見直されているようですね。
【アレルヤ(Alleruia)とは】アレルヤとは「神をたたえよう」という意味のヘブライ語で、教会では喜びの表現として用いてきました。日本ではヘンデルの「メサイヤ」の「ハレルヤコーラス」でお馴染みの方が多いでしょうね。 【ヴェネツィアという都市について】 皆さんは、ヴェネツィアと聞くと何を思い浮かべますか?「水の都」やゴンドラなどでしょうか?或いはシェークスピアの「ベニスの商人」を思い浮かべ、あまり良い印象をお持ちでない方もいらっしゃるでしょう。 【音楽はドイツから始まる?】−歪められた音楽史− 日本では、バッハの人気が圧倒的ですね。今の大人が子供の頃は、クラシック音楽はバッハから始まったかのような音楽教育を受けました。(今でもそうかな?) また、3Bといわれるように、バッハ、ベートーヴェン、ブラームスなど、クラシック界では圧倒的にドイツ、オーストリアものが有名で人気があります。 【サン・マルコ寺院とモンテヴェルディについて】 モンテヴェルディが活躍した都市国家ヴェネツィアのシンボルとしての教会が「サン・マルコ寺院(大聖堂)」です。 【音楽神「オルフェオ」について】 NEW!! 私ども「ラ・ヴォーチェ・オルフィカ」の由来となる「オルフェオ(オルフェウス)」は、ギリシャ神話の音楽の神でアポロンのこどもです。 |
<主な参考文献> 【ページのトップへ戻る】
著 者 | 書 名 |
芥川也寸志 | 音楽の基礎(岩波新書) |
井上太郎 | レクイエムの歴史 |
金澤正剛 | 古楽のすすめ(音楽の友社) おすすめ! |
野村満男 | チェンバロの保守と調律(東京コレギウム出版) |
皆川達夫 | 中世・ルネサンスの音楽 |
グラウト | 西洋音楽史(音楽の友社) |
ブルーメ | ルネサンスとバロックの音楽(白水社) |
音楽史ものしり辞典(音楽の友社) | |
音楽辞典、羅和辞典、ラテン語基礎1500語 |